いただきもの連載ｓｓ！「蒼の勇者と紅の姫君」プロローグ

前回の「マント萌え！！勇者なの！」な絵に触発されてしまいました「この空の世界に」の緋詠さんがｓｓを書いて送ってくれました～！ドンドンパフーーーーー！！
自分の中ではギャグ一直線なイメージだった「勇者なのは」ネタだったのですが、どうやらシリアス長編のようです！くはああああーーーーー楽しみすぎる！

さて、今回は頂きましたプロローグをうｐ！
なのはさんになにやら深い事情があるようで…楽しみ！…ツヅキマダー？？？

続きをよむからレッツプロローグ！！
感想は緋詠さんのところまでレッツラゴー！

 

 

――それは、とある小さな国で生まれた勇者の物語。

――それは、ある少女達の淡い恋の物語。

――さぁ、始めよう。この物語の扉よ…今開け……。

 

リリカルなのは

Held des Blaus und songstress von Hochrot
～蒼の勇者と紅の歌姫～

 

上空を飛行する物体。それはある一点を目指し、急降下した。地面に衝突するかと思われたが、すんでで止まり、野に降り立つ。雲ひとつない澄みきった蒼の空を見上げる瞳は、同様に澄んだ蒼穹。風になびくは絹糸のような亜麻色の髪に、濃い青のマント。その下は純白の意匠の服。二つに結われた亜麻色が揺れ、その者が笑う。
幼き笑み。まだ、九つくらいであろうその者。少女。傍らを紅玉が飛ぶ。

「ねぇ、レイジング・ハート。今日は何してあそぼっか？」

無邪気な頬笑み。傍らの紅玉が明滅する。すると、少女の服が瞬く間に消え、先ほどとは違う、町の子どものような服装になった。けっしていい布とは言えないが、それでも、その服は彼女のお気に入りだった。
野に腰を下ろし、空を仰ぐ。その相貌が何を見ているのかは分からない。
ただ、何かを見ていることは分かる。まっすぐに。不屈の心と意味する名の紅玉は、その少女の胸元に静かに降り立つ。

「…何で、誰も私と遊んでくれないのかな…。どうして、名前を呼んでくれないのかな？…なんで、私は…………なんかに生まれたのかな…？」

風の音が少女の声を消す。それ以降、紅玉が明滅することはなくただそこにいる。
その時、草が揺れる音がした。「誰っ!?」と少女が身を起こすと、少女の木の上から人が落ちてきた。いや、降り立った。少女のように減速の力を使うことなく、純粋な体術のみで華麗に着地した。そして、金砂のように流れゆく髪が舞い、雪のような白い手で顔にかかった神を抑えると、その者の顔が見えた。
まるで、―『人形』―のように整った顔。一つ一つのパーツが、見事な調和を生み出し、芸術に域に達している。そして、その者もまた、少女。しかも、亜麻色の髪の少女と年齢が同じような少女。金の髪の少女は、瞼を開ける。
深い紅が現れる。

「―――君、誰？」

紡がれた言葉は、鈴の音のよう。亜麻色髪の少女は、首をひねる。

「…人にものを聞く時は、自分からって習わなかったかな？」
「…誰に？」
「誰でも良いよ。…で、まず名乗るのなら貴女が先じゃないのかな？」

亜麻色髪の少女は平静を装う。いきなり現れた少女は、顔色一つ変えず、頷く。そして、少女は数秒ほど考えた後、自身の名を口にした。

「フェイト。…フェイト・ハラオウン…」
「ふぅん、…私は、なのは。高町　なのは」
「なの…は。なのは…なのは…」
「？」

少女は――フェイトは、亜麻色髪の少女――なのはの名を噛み締めるよう呟く。
そして、紅の瞳が、なのはの蒼の瞳を捕える。逸らせない。逃れられない。

「な、何かな？……フェイトちゃん」

辛うじて動いた口から漏れだした言葉。いくらか考えて、彼女の名を呼んだ。すると、先程までの無表情が嘘のように、少女は花が咲くような頬笑みを浮かべる。

「うん。私はフェイトだよ。覚えておいてね……なのは」
「へ？」

その瞬間。一陣の風が吹き、なのはは咄嗟に手で顔を覆う。風が治まり、彼女に声をかけようとした時…―――もうそこには誰もいなかった。
幻か。白昼夢か。なのはは不思議と、今のが夢では無かった気がする。

「…フェイト…ちゃん…」

何故か、あの金髪の少女の名が、脳に染みわたる。
なのはは紅玉を呼び寄せると、また無邪気な笑みを浮かべる。紅玉が一、二回明滅しなのはの体が桃色の光に包まれ、先程の白い服に青のマントをなびかせる。

「今度、また来たら。あの子に…、…フェイトちゃんに会えるかなぁ……」

そう言って、地面を蹴り、なのはは空へと上がった。

――後に二人は互いの存在を知る。

――…一人は運命の勇者。

――…一人は神の歌姫ディーヴァ。

――奏でる音色は、虹色ラプソディか、鈍色レクイエムか……

 

続く！
（全２０話らしい！）